【対談】私がこの世を去るとき、ペットにしてあげられること。【大川獣医師×櫻町弁護士】

 

 

現在日本国内で飼育されている「ペット」の数は約2100万頭にものぼり、15歳以下の「子供」の数を大きく上回っている。

人間の子供以上に身近な存在ともなりうるペットであるが、少子高齢化の波を受け、最近になってお年寄りとペットの関係にも変化が起きている。

獣医師として日々、診療の現場に立つ私も体験として、お年寄りの方の中に「動物は大好きだけど、自分が死んだ後にペットだけ残しては死ねない。

「だからもう動物は飼わない。」という方が多くなってきたと肌で感じている。

そこで、ペット業界の様々な問題について色々な切り口から見ていくために対談を行った。

 

 

ペットに財産は残せるのか?

 

大川拓洋(以下、大川): 初めまして獣医師の大川と申します。よろしくお願い致します。

 

櫻町直樹(以下、櫻町): 弁護士の櫻町です。よろしくお願いします。

 

大川: 櫻町先生は「ペットに財産は残せるのか?」というテーマをセミナーでとりあげていらっしゃいますよね。私は動物病院で獣医師として仕事をしてきたので、様々な状況の飼い主様に出会うことがあります。その中には、お年寄りの飼い主様で、自分の残りの寿命よりもペットの残りの寿命の方が長く、自分が死んだあとペットの事を心配されている方や、自分の寿命が残り少ないからペットを飼いたいけど躊躇しちゃっている方もいらっしゃいます。そのような方にも安心して楽しくペットと生活をしてほしいと思っているのですが、現在そのようなニーズを反映した仕組みはあるのでしょうか?

 

櫻町: そのようなニーズをくむ「仕組み」とまでは言えないかもしれませんが、ペットの世話をしてくれる人に遺言で財産を残すという方法や、最近では「ペット信託」というものがありますね。ペット信託というのは、ペットとペットのお世話をするための費用を第三者に信託するというものなんですが、大きなメリットは、信託された財産については、信託した人の財産から分離されるという点です。つまり、回りの人が勝手に使うことができなくなるんですね。信託してしまえば、例えば、同居している相続人が勝手に財産を使ってしまったという事態を防ぐことができます。

ただ、これはお金の面ですので、安心して自分の死後にペットが幸せに生活できることとは少し違いますね。「どうやってお金を遺すか」ということも重要ですが、やはり、「自分が死んだ後もちゃんと世話をしてもらえるのかどうか?」というのが、飼い主の方にとっては一番気になるところなのかなと思います。

 

櫻町: 大川先生にお伺いしたいのですが、例えば、犬を一年飼育するとどのくらいの費用がかかるのでしょうか?ペットフード代ですとか、予防注射代ですとか諸々含めて。

 

大川: ザックリですが飼育費用ということでどうぶつ病院費用も含めてみてみると、年間で犬だと約30万円、猫だと約20万円程度ですね。ペットの平均寿命を考えると、ペットの生涯でかかってくる費用は犬だと約400万、猫だと300万くらいですね。

もちろんどのような生活をするか、どのような犬種、猫種なのかでかなり変わってきます。ただ、状況をきちんと把握すればあとどれくらい費用がかかるかは算定できると思います。

このようにペットを飼育するには結構な額になってくるので、最近はペット保険というものに加入される方も増えてきています。確かペットを飼っている人の10%くらいだったと記憶しています。

 

 

赤の他人に託すという選択

 

大川: ただ、これもあくまでお金の話なので、私自身も、仕組みとして飼育者が死亡してもペットが幸せに暮らしていけるサービスって本当に必要なことだと感じています。例えば、自分が死んだら自分のペットを親や子供に世話をしてもらう。とかって結構あると思いますが、なんかうまくいっていない印象があります。もっと赤の他人が世話を引き継ぐ仕組みの方がうまくいっちゃう感じがしますがいかがでしょうか?

 

櫻町: そうですね、家族のほうが、かえって問題が生じるというケースもあると思います。「なぜ、ペットのためにこんなにお金を遺すのか」とか、あるいは、飼いたいけどマンションだから飼えないとかいうケースもあるでしょうし。そうであれば、きちんと世話をしてくれる第三者にお願いして、その費用は遺言などで手当てする、というほうが上手くいくかもしれません。

 

大川: そうなんですね。遺産って赤の他人でももらえるのですね。法人が受け取ることも可能なのでしょうか?

 

櫻町: 可能です。遺言というのは、自分の財産を死後にどうやって使ってもらうか、処分するかを決めるというものですから、赤の他人にあげることもできますし、例えばNPO法人のような団体に寄付することもできます。ただし、「遺留分」というのがあって、遺産のうち一定の割合については、相続人のために留保しなければならないということになっています。

例えば、相続する人がお子さんのみのケースだと、遺産の2分の1が遺留分になります。具体的にいうと、遺産が1000万円あったとすると、子ではない第三者にあげることができるのは500万円までになります。ただ、遺留分というのは遺留分のある人が「自分の遺留分が侵害されている」という請求をする必要がありますから、仮にこのケースで1000万円全額をあげてしまった場合でも、子が文句を言わなければ1000万円はそのままということになります。

 

安心してペットと暮らすために

 

大川: そうなのですね。勉強になります。ということは、ビジネスの仕組みとして、ペットの今の飼い主様に対して「あなたが亡くなった後にあなたのペットを大切に飼育してくれる人をマッチングしますよ。だから安心してくださいね。」ということはできそうですね。そこに弁護士の先生がちゃんとペットが幸せに生活しているかをチェックする。それを安心の担保にする。そしてその資金は、何かしらの積み立てなり、生命保険、遺産相続という形で捻出する。こんな感じってできそうですね。

現状そういう飼い主がいなくなったペットってボランティアとかで飼育されているケースが多いので、そこも変えることが出来ればもっと安心してペットを残して亡くなったり、新しくペットを迎える人が増えてくれる気がします。

 

櫻町: そうですね。ボランティアというと響きはいいですが、質のいいものを無償で継続的に提供するというのは、なかなか困難ですからね。

 

大川: 次回はもう少し具体的な仕組みについて対談していきましょう!!本日はありがとうございました。

 

櫻町: ありがとうございました。

 

 

次回は、さらに核心にせまります。高齢者大国、日本。老後、ペットとの関係を心配されている方は多いはずです。

同じ悩みを持たれているたくさんの方々に情報を伝えていきたいと思っています。

 

 

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紹介:パロス法律事務所 櫻町直樹氏
様々な法律に関する相談を受けながら、掲示板等の誹謗中傷に対する削除・発信者特定のサービスも展開。
http://net-aegis.com/

 

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kiwa
とあるIT会社の取締役。 また、このメディアサイト「ヨセガキ」の管理者やってます。 その他、様々な事業に関わっています。 755ランキングサイトも運営中! http://kiwa-soft.com